全能感と親子関係

人間は生まれてから、自分の母親を認識できるようになると、その母親が完璧な人間であることを本能的に求めています。
これを全能感というのですが、この全能感は成長とともに変化していきます。

少しずつ母親が完璧でないことを悟りはじめ、その分自分が何でも出来るような気持ちになる時期を経て出来ることと出来ないことがあることを知り、出来ないことの中には努力すること出来るようになることがあることを体験を通じて理解して健全な自尊心を育んでいきます。

しかし、幼少期の成長過程で全能感が健全に変化していかなかった場合、現実離れした自信を持ったり、過度に自信のない人間になってしまうことがあります。
そうならないために親の役割は重要なのです。
親の役割はいくつかありますが、その中でも健全な自尊心を育むということはその一つなのです。

不健全な全能感と人間関係

健全な全能感を持っていると、過度な自信も過度な自信のなさも人間関係を築く上での妨げになります。
過剰に人に偉そうにしたり、見栄を張ったり、無謀なことをしようとしたりする人や過剰な人見知り、何かあるとすべて自分が悪いと思ってしまう、人にどう思われているのか異常に気になる、などという形で人間関係が上手く築けないということが起きてしまうのです。

過度な自信がある人も過度に自信がない人も共通しているのは、自分は努力することで何かを達成できるという体験が欠如していて、どちらも根本的には自己不安を抱えているということです。

過度に自信のない人は分かりやすいのですが、過度に自信のある人も等身大に自分が受け入れられていない、本当の自分の姿を知られるのが怖いという点で人間関係が損なわれますし、その背景には自己不安があるのです。

不完全であることを教えることが子育て

健全な全能感を持った人間に育てるためには、2つの重要なポイントがあります。
一つは、子供に自分は出来ないこともあるけど、努力することでできるようになったり、能力が向上するんだという体験をさせてあげることです。

例えば、父親とオセロをして勝てなかった子供が、ある日勝てるようになったという体験もその一つです。
また、親が子供の成長に合わせて努力すれば達成できる課題を示して、達成できた時にその努力を褒めてもらえたという体験も該当します。

大切なことは、親が自分の負けをちゃんと認めたり、努力を評価して、しっかり褒めてあげることです。
子供に不完全であることを教えて、その次に努力で補えることを伝えることが必要です。

もう一つは、親も不完全であることを認めることです。
子供とのコミュニケーションの中で、親が間違っていた時、失敗した時には、素直に謝ったり認めたりすることが必要で、その姿勢が子供に親も完璧でないことを伝えることになり、等身大の親を受け入れていくことにつながります。

等身大の親を受け入れ、認めるところを認めた上で、親を超えていくという思いも人間の成長に必要な過程なのです。

不完全な人間が自分を見つめながら子供と接する・・・だから子育ては尊い

子育てをする上で、親も自分の未熟さや至らなさを痛感することも多々あります。
それを受け入れて、自分自身も、子供に対してもそれらを認めて接していく姿勢が子育てでは大切で、その姿勢を子供とのコミュニケーションの中で問われることが多々あります。

子育てで悩んでおられる方は、不完全な人間が一生懸命子供と向き合うところに子育ての尊さがあると思って、少し肩の力を抜いて子供と向き合ってほしいなと思います。

また、親子関係にわだかまりを持っている方は、不完全な人間である親も、不完全ながらも自分と向き合い育ててくれたことを心から実感できたら、少しはわだかまりも解けるのではないかと思います。

赤ちゃんは本能的に親を完璧と思いたがり、その全能感の健全な変化が人間の心の成長に関わってくるので、不完全であることを認め子育てをしたり、親が不完全であったことを受け入れて親子関係を振り返れるといいのではないかと感じています。

 

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